「ようやく昼過ぎに城に戻ってきて、今夜はお店にうかがえるかと思ったのに。陛下への報告やら事務処理やらしていたら、こんな時間に……。元気に働くフィアナさんを盗み見たり、ごみを見るような目でフィアナさんに見られたりしながら、美味しいお酒とごはんを楽しみたかった……」

「普通に楽しんでくださいよ。なんですか、ごみを見るような目で見られながらって」

「私の一か月ぶりの心の拠り所がぁ……っ」

 えぐえぐと、人目もはばからず落ち込むエリアス。よく見れば、エリアスはいつかの日のように、上から下までばっちり宰相としての服装だ。なんとか閉店前に滑り込みたくて、着替える間もなく城を飛び出してきたのだろう。

(エリアスさん……うちの酒場のことも、気に入ってくれていたんだな)

 本気で残念がっているエリアスの姿に、ほんの少しだけ嬉しくなってしまう。けれども、やっぱりエリアスはエリアスだ。毎日こようが、ひと月ぶりだろうが、いつも変わらずマイペースでちょっぴり面倒くさい。

 やれやれと眉を下げて、フィアナは頬杖を突いた。

「別に、そんなに悲観しなくてもいいじゃないですか。無事帰ってこれたわけですし、またお店に通えるんですもん」