頭が、痛い。
いや、痛いなどと形容するだけでは生ぬるい。まるで、頭のなかで教会の大鐘がぐわんぐわんとなりわめいているかのように、頭が割れそうだ。
うう、とエリアスは呻いた。
なぜこのような目に合っているのだ。昨晩、寝る前に何かしただろうか。
昨晩。
そこに考えが至った途端、エリアスは思わずがばりとふとんを跳ね上げ飛び起きた。そして声にならない悲鳴を上げた。
そうだ。もう何日目か数えるのも面倒くさくなるほどの連日勤務。加えて朝から五月雨式に降り注ぐ無茶ぶりにつぐ無茶ぶり。それらについに堪忍袋の緒を切らし、昨夜は街にとびだして酒場で酔いつぶれるほどに酒を煽ったのだ。
だが、そのあとで屋敷に帰った覚えがない。それどころか、店をまともに出た記憶すらない。そしてここは、どう見ても自室のわけがない。
頭を押さえつつ、必死に部屋の隅々を見回す。小さいが清潔感のある部屋。簡素な机と椅子。朝日の差し込む窓。丁寧にたたんでおかれたエリアスの服。
ここはどこだ。自分はどこにいるんだ。そんな風に混乱をきたしていると、ふいに扉が外側から叩かれた。