通りの角から、馬車がものすごい勢いで曲がり、小径に飛び込んできた。思わずぎょっとしたフィアナがその場に固まるなか、馬車は店の前に止まる。
御者が開けてやる間もなく扉が跳ね開けられ、中から泡食った顔でエリアスが転がり出てきた。
「あ、ああああああ!! フィアナさん!!!!?」
「エリアスさん!?」
ぱああと顔を輝かせるエリアスと、仰天するフィオナ。だが、店の戸に掛けられた札が「閉店」になっているのを見とめると、エリアスはその場に崩れ落ちた。
「あ、あああぁぁぁあ!! 閉、店!!!! あと一歩、及びませんでしたぁぁぁぁああ!!!!」
「ちょ、こら、エリアスさん! いま、夜!! 夜だから! シャラップ!!」
夜の町に響き渡る慟哭に、フィアナは驚きも忘れてエリアスを叱り付けたのだった。