「氷とか、鋼とか、好き勝手言いますけど……。わたしだって必死なんです……、がんばっているんですよ……」

「はいはい。ゆっくりお話し聞いてあげますから。とにかくお店ん中入りましょうねー」

 宥めすかしつつ、男を支えて店の中へと導く。ふたりが中へと消えたあと、ぱたんと静かに夜の扉が閉じる。

 こんな小さなおせっかいに、これから大きく振り回されることになるなんて、この時のフィアナには知る由もなかった。