──俺が小春の心臓を治してあげる

あの言葉が今度こそ本当に崩れ去ったのだ。
政宗は医師にはならなかった。だから、小春との約束は約束ではなかった。それは小春だけが抱いていた夢や希望だったのだと思い知らされた。

「どうした、小春?」

「ううん、何でもないよ」

「久しぶりに政宗に会えて感激してるのか?相変わらず格好よかったもんなぁ」

「うん……ってお兄ちゃんからかわないで!」

思わず頬を染めてしまった自分が恥ずかしい。そんな小春を優也はニヤニヤとしながらからかった。

約束が約束ではなかったことはショックだったが、だからといって政宗のことが好きではなくなったかというと、そうではない。

久しぶりに会えて嬉しかった。
また来てくれると言ってくれた。
今日だって、以前と変わらずおしゃべりしてくれた。

それだけでいい。
多くは望まない。

小春はそう自分の心に言い聞かせた。