披露宴は花嫁不在のもと、お食事会へと無理矢理名前を変えて行われた。

両家の意向でご祝儀は返却となったのでタダで頂くのは悪いと思ったが、残されたご馳走は廃棄への道しかないと聞かされればそれにも胸が痛む。

何より食事にも会場にも罪はない。

「もともとお食事が美味しいってことで有名な会場だったし、最高だったよ。お食事はね」

「えー!いくらなんでもお姉ちゃんの神経図太い!私だったら喉を通らないよ」

妹が信じられないと声を上げる。

会場は色とりどりの花に飾られたテーブルとご婦人方の華やかなドレスやヘアスタイルが鮮やかだった。

どこをどう見ても新郎新婦を祝う雰囲気だった。

しかし実際は違う。

花嫁不在に救急車騒ぎもあった。
和気藹々となんてできるわけがない。

華やかさとは真逆のしんみりとした雰囲気と居心地の悪さを感じせざるをえないお食事会だったことは確かだ。

でも結論。やっぱり食事に罪はない。

「雰囲気さえ気にしなければ本当に最高に美味しかったな」

「あんたの食い意地は小さい頃から変わらないわね…」

母と妹がドン引きしているのがよく分かった。