「えー!なんとも悲惨な話だね」

「本当にドラマみたい」

帰宅してから先ほどの嘘みたいな本当の出来事を家族に話した。

「結局どうなったの?」

絵に描いたような泥沼展開に母と妹の二人は興味を隠さない。
父だけは一つ咳払いをして微妙そうな顔をしている。
人の不幸に食いつくのを窘めたいのかもしれない。

「見てて悲惨だったよ。花婿側は親族揃って怒りが最高潮だし、花嫁側は必死に謝り倒してた。途中で花嫁のお婆ちゃんが卒倒して救急車騒ぎにもなったし……」

背中のファスナーを下げてもらいながら私は続けた。
父が気を遣って慌ててリビングを出て行く。

「親戚の誰かが、これは誘拐だ!なんて騒ぎ始めるから本当に驚いちゃった」

「救急車だけじゃなくて警察も来ちゃったの?」

「まさか。どう見ても花嫁の意思だったし変な騒ぎにしないでくれって花嫁側が必死だったよ」

話しながらセットした髪も解きラフなTシャツ姿へと着替える。

「聞けば聞くほどすごいね。一生忘れられないご招待じゃん」

「本当にそうだよね。お食事も美味しかったから余計に記憶に残りそう」