父ははっきりと言い切った。
ともすれば、この言葉は重荷になるだろう。真くんを縛り付ける言葉にもなる。
でも、今は、この場合は違う。真くんにとって必要な言葉なんだ。だから父はあえて言う。はっきりと。

「伯父さん……、本当に? 俺でいいの?」

「真がいいんだ。蓮、お前も異論はないな?」

「…ああ。俺も真がいないと困るな。
でも兄さん、…ありがとう。」

「よし。じいちゃんは?」

「真が跡継ぎだ。朝倉コーヒーをいずれ任せるよ。嬉しいなぁ。ただの街のコーヒー屋がこんなに大きくなって、それを孫の真が継いでくれるんだからな。こんなに嬉しいことはないぞ。」

「よし。じゃあ、花は?」

私? 私はもちろん…

「真くん。私はもう、桜川花なの。桜川の家内として、桜川の跡継ぎを育てるのが今の私の役目。朝倉コーヒーは継げないわ。それに、私に数字を追う経営も無理よ。真くんが継いでくれるのが私の望みでもある。
あ、でもね。A terraceの運営はさせてもらうけど。これは私の生き甲斐なの。私は、子育てをしながら、ここで生きていくから。出来るのはA terrace のことだけよ。
…だからね、朝倉コーヒーをお願いね?」

「花…。
俺…やるよ。俺に出来ることをやる。」

真くんが男泣きしている。
大丈夫。きっと今日から真くんは変われる。今の自分を否定せず、自信を身につけていくことだろう。愛先生もホッとした顔をしている。
今日、真くんのためにも、この話し合いの機会が持てて良かったと思う。