お父さん…。
そんな事を考えていたんだ。
負い目なんて、感じる必要なかったのに。
長年住み慣れた家を処分してしまった時は確かに悲しかった。当たり前じゃない。思い出がたくさん詰まった家だもの。
でも、両親以上に大切な人がいなかった私には、一緒に東京に移り住む以外の選択肢はなかったんだけどな。
私はただ仕事に夢中で、人間関係を広げる余裕がなかっただけ。それでも寂しさを感じないでいられたのは、もちろんお父さんの過干渉があったからだ。
……あれ、全部考えての事だったんだ…。

「やっと、花の良さに気づいてくれる男が現れた。それが寿貴くんだ。目に入れても痛くないほど可愛い花を嫁に出すのは、もちろん気に入らなかった。でも花の幸せのためだ。それに、家族が増えるということは、人間関係も広がる。ここに…この地にちゃんと根を下ろすためには、1番良いきっかけになる。
こんな可愛い孫にも恵まれて、最近では花に友達も出来た。全てがいい方向に向き出したと思う。」

東京に来てからの父の気持ちを、こんな形で聞くことになるとは思わなかった。でも、結婚式前の親族が集まっている席だ。…1番ふさわしい時なのだろう。