いつの間にか、私達の会話が聞こえたのか、周りは静かになっていた。

「真。お前、そんな事を考えていたのか?」

「父さん…」

「真。真はコーヒーが嫌いか?」

突然、父が尋ねた。

「…嫌いじゃないです。」

「真、今は親族の集まりだ。
伯父と甥。昔みたいに仁伯父さんでいい。
普通に話せ。」

「…………うん。
コーヒーは嫌いじゃない。好きだよ。宣ほどじゃないけど。」

「そうか。ならいい。
じゃあ店舗を回るのは嫌か?」

「……別に。嫌じゃない。
でも俺は、何も出来ていない。ただのバイトと同じ事をしているだけだ。……会社にとって、役に立っているとは思えない。」

「そりゃそうだ。まだ2年目だ。それで何もかも出来ていたら驚く。
真、お前と花が違うところはスタートラインなんだ。花は大学時代、ずっと朝倉コーヒーの店舗でバイトしていたからな。店舗での流れを理解した状態で入社した。そこは真よりもアドバンテージがあったと思う。」

「……。」

「それと……花がお前の目から見て華々しく活躍しているように見えるのは、俺に負い目があることも関わっている。」

…お父さん?

「……少し話はズレるかもしれない。でも聞いてくれるか?」

真くんが、コクっと一度だけ頷いた。