きっちりお互いのコーヒー一杯ずつ支払いを済ませると、店を出た。


これからどこかに行くわけにもいかず、自然と僕たちの足は駅へ向く。



行きは幸せだった道なのに、今は景色が一変して見える。


気付かないうちにこんなにも紅葉していたらしい。


確かにもう11月も末だ。

風も随分と冷たくなったし、日も随分短くなった。



確かに変化しているはずなのに、意識してみないと変化していたことには気付けない。


意外とそんなものなのだろう。




そのままお互い何も話さないまま、しばらく僕たちは並んで歩いた。



君が地下鉄の案内表示の前で足を止める。


そうか、ここからだとお互い路線が違う。

君とはここまでだ。



「私、こっちだから」



君は左を指差して僕を見上げた。

その指先には綺麗なネイル。


こんな時でさえ僕は思ってしまう。



君は隅々まで綺麗で美しい。



僕が頷くと、君は改めてこちらへ向き直った。


そうして少し言葉を探すような間を取ってから話し始める。



「今までありがとう。あなたがいたから、辛くても頑張って来れた」



やめてくれよ、最後にそんな。


そう言おうとして君の顔を見ると、意外とけろっとした顔をしていて拍子抜けしてしまう。