「エヴェリンはあなたたちの話をことのほか気に入っていてね」
「ちょっとルーカス、変なこと言わないでっ」

 私の言葉に、パッと跳ね上がった顔が赤く染まる。恥ずかしげに睨む上目遣いは可愛いだけで、ぎこちなくなる前の自分たちであったなら、髪を撫でるか肩に触れるか、触れてしまっていたに違いない。思わず伸ばしたくなる手をぐっと堪えた。

「こちらこそ、お二人のことをいつも噂していたんですよ」
「理想の婚約関係だってね。ルーカスがいつも婚約者の可愛さを語って聞かせてくるから」
「……リック。余計なことは言わなくていい」

 エヴェリンを可愛く怒らせた罰か、今度は私がエンリックを睨むことになった。彼女はといえば、反応を窺う私と目が合うと慌てて逸らしはしたが、それはどんな感情からなのか……、どうにも伝わってはいなさそうな気がして複雑な気持ちを抱える。そんな私たちを見守る視線に堪えかね、ついエンリックと子供じみた言い合いをしているうちに、

「最近は淑女教育の一環としてこちらで時々お世話になっているのですけど、いつもこんな風で」

 アンヌ嬢が本題の一端に触れていた。
 肩の跳ねた私に、アンヌ嬢が横目で頷く。私が求めた時の口添えを頼みはしていたけど、まさか率先するようにそれを話しかけるとは。協力を願うことになった経緯を説明しているだけに、見ていられなかったのかもしれない。情けない……のはすでに今更か。