「なんか、悪かったな、僕たちのせいで」

 私の取り乱しようを見ているせいか、いつになくおとなしいリックがアンヌ嬢とともに頭を下げる。

「僕からも事情を説明するから」
「いや、とりあえずお前は黙っててくれ」
「なんでだよ!」
「ややこしくなる気がする」

 気持ちはありがたいが、すべてを終えてからの介入にしてほしいと両肩に手を置いて訴えた。善意からの言動のはずが事態を引っ掻き回すことが昔からあるのだ、この男は。いざとなればアンヌ嬢がフォローしてくれるかもしれないが、不安要素は取り除いておきたい。

「二人には客人として普通に振舞ってもらえれば助かる」と、こんな状況で普通を強要するのも酷かもしれないけど、二人とはそう取り決めておいた。

 身につけたカフリンクスを握るよう手を触れる。これが届いた時に添えられていた手紙に、私の瞳のようだと書かれていた石。どちらかといえば自分の色より彼女を連想させるものをそばに置きたいものなのだが。
 それでも私のことを考え、想いながら選んでくれた物なのだということが嬉しくて堪らなかった。

 そうだ、思い悩ませるのならそんな幸せな悩みでなくてはならない。