「悪いんだけど明日空いてるわよね?」
再び母上が放り込むように告げてきたのは、あれから一年以上が経ってからだったろうか。
「ほら、アンちゃんの件。あなた結局たまにリックとおしゃべりしていたくらいで、アンちゃんが淑女らしくなったかまだ見ていないじゃない? 様子を知らないならちょうどいいと思って、あの子たちがそれなりに見えるかちょっと付き合ってもらえる?」
ほら、ではないし、ちょうどいい、ではない。
語尾を上げて問いかけているようでいて、これは問いではないと察する。突然何を言い出したのかと、知らず眉間に皺が寄った。
「明日はエヴィとの約束があります」
それも、自分の身勝手な余裕のなさから少々ぎこなく別れて初めてのデートという、私にとっては非常に大切な約束が。
「二人のために出来ることすべきことがあるなら、それはもちろんやぶさかではないですが、急に明日と言われてもそれは無理です」
「あらそうなの。知らなかったから明日で約束しちゃってるのよね、どうしましょう」
「母上の約束なら母上が付き合うべきでしょうし、日程を変更すればいいだけでは?」
負けてはならない。譲るつもりはない。そんな気持ちを込め、半ば睨むようにして反論する。