だけど当たり前かもしれない、彼のお友達と公の場以外で会うことはこれまでそうあることではなかった。わたしがまだ社交は不慣れだろうからと、もっと大きくなってからにしようと、言われてきた。
そうやって子供扱いし続けてきたのにこうして引き合わされたのは、そろそろ解禁ということなのか、それとももう終わる関係だから最後の記念とでもいうことなのか。後者なのかもしれないと思うと、新たに知る一面にも胸が締め付けられるばかり。
「最近は淑女教育の一環としてこちらで時々お世話になっているのですけど、いつもこんな風で」
アンヌ様が小首を傾げるようにして微笑む。
「淑女教育ですか?」
「ええ。エヴェリン様もご存知とのことですが、私はもともと貴族ではありませんから。伯爵家に嫁ぐに相応しい作法なり勉強なりを、教わっているところなのです」
もちろん知っている。使用人として働いていた彼女を見初め、長年かけて口説き落としたというお二人の馴れ初めはわたしの胸を高鳴らせ、そんな風に想い想われるなんてどんな気持ちかしらと、家族や友情以上の感情を知らないわたしは思い馳せたものだった。
とはいえ、それを知っていてなお、ここまで時間をともにして違和感を覚えることはなかった。それはつまり、アンヌ様のおっしゃる淑女教育の賜物に違いない。庶民と貴族では生活が異なるはずで、それに見合った所作は一朝一夕で身につけられるものではないだろうに。まだ婚約者ではない、なんて言ってはいたけど、その気がなければとてもじゃないけど出来ることではない。