おいしいケーキとお茶を楽しんだわたしたちは、帰る前に手紙を送ってしまおうと郵便舎に向かった。
普段のように部屋でしたためたものを使用人に預けてもいいところではあったけど、微妙な気まずさが燻り続けているからこそ、今のこの気持ちのまま勢いで書き上げて送れたらと考えて。帰ってからだと先延ばしにしてしまうかもしれないもの。
郵便舎の一角を借りて手紙を用意し、プレゼントとともに受け付けに預ける。手紙鳥での郵送で依頼したから、魔導術で今日明日にでも彼のもとへと届くはず。
彼の様子が不自然だなんていうのは、きっと気のせい。
そもそも兄妹同然に育ったのだから妹扱いは当たり前で、これから先もともに過ごしていくうちに変化していくものなのだろう。これまで通りにお互いを気遣う気持ちなんかを忘れなければ、きっとそれでいい。
「お待たせ。……ナディル?」
少し離れ控えて待っていたナディルが、呼びかけにハッと焦点を合わせる。いつだって先んじて動く彼女が、らしくなく鈍い。
「ああお嬢様、終わられたんですね。それでは帰りましょうか」
「ナディル、どうしたの」
立ちくらみでもしたかのように顔色を悪くさせ、ぎこちない様子には違和感しかない。護衛を見上げれば、彼は警戒を怠らず周囲に視線を巡らせているけれど、……つまりはそんな彼が彼女の様子に気づいていないはずがない。
わたしは問いただすため彼らの名を呼んだ。二人はそれぞれ気遣わしげな表情を浮かべる。
「……お嬢様、ルーカス様はご予定があるとおっしゃっておられたと?」
「カルロ、」
幾分険しい顔のまま口を開いたカルロと、それを制するよう声をかけながらも憂う雰囲気の隠しきれていないナディル。
いつだってわたしを慈しんでくれてきたそんな彼らの態度に、何事かを、察してしまった。