「お気に入りが見つかってよかったですね」

 スイーツが美味しいと噂になっていたカフェ、たまのことなのだからと渋るのを制して対面に座ってもらったナディルが微笑む。彼女の手元に立てかけられた白い日傘の持ち手に結び付けられた装飾を、つい眺めていたわたしは目線をそこから離して笑った。

「ええ。今日はほんとうに満足だわ」
「それはようございました」

 その装飾はピンクベージュのタッセルに花を模して組み合わせた石を縫いつけたもの。ルーカスへの贈り物を探していて見つけたものだった。

 何気なく立ち寄った雑貨屋さんで、ふと目を引くものがあった。吸い寄せられるようにして手に取ったカフリンクスは、だけどどう見ても安物の石を使用していて、さすがにこれはと、一度は購入を見送った。それなのに引き返してしまったのは、その緑青色の石が彼の瞳を思わせたから。

 良質なものを見慣れた目には、チープでおもちゃみたいなものでしかないかもしれないけれど、合わせて自分用にお揃いにも見える石のついたストラップを、お兄様にもルーカスに選んだものとはデザインの異なるカフリンクスを購入すれば、わたしの胸中は晴れ晴れとしてステップでも踏みたい気分になった。

 そうよ、例えちょっと安っぽくたって身内だけの時に着けてもらえばいいのだし、気持ちが大事だってこと、お二人なら理解してくれるに違いないもの。まあ、お兄様へと決めたそれの選び方が、近くに展示されていたから……ということを知られたら、ついでのようで拗ねてしまうかもしれないけど。