授業中の航平は、いつもうたた寝をしているか、頬杖をついてつまらなそうにしているか、シャーペンをクルクル回しながら前を見ているだけだ。

だから、選択が違う化学以外は、その日の夜にあたしのノートを写す。

中学まではそんな事はなかったのに、高校に入ってからはずっとそう。

毎日繰り返される事だから、あたしもすっかり慣れてしまったけど、時々ふと思う。


航平には、あたしのノートを写す必要なんてないんじゃないか・・・って。


常に、学年で1,2番の成績を修める航平。

どんなに必死に頑張っても、50番以内に入るのがやっとのあたし。


そんなあたしのノートが、航平に必要とは思えない。

でも、その事を言う度に、航平はいつもニコニコ笑う。


『なに言ってんの。ひなこが居るから、俺は安心してるんだよ?』


本気なのか、気を使ってくれてるのか分からない。

でも、そう言って航平はあたしに、あたしの居場所を教えてくれる。


あたしでも役に立ってるって。

『ここ』に居て良いんだって・・・