「そういえば今度、特クラに編入生が来るらしいよ?」


あたしのノートを書き写しながら、航平はいつもあたしの知らない学校の話をする。

たいてい翌日の予習をしているあたしは、半分聞き流しながら答えるのが常だ。


「編入生?」

「そう。今日、宮藤が呼び出し受けたって。ひなこ、ここ何?」


古文のノートの一ヶ所を指差して、航平は首をかしげる。


「え、どこ?」


あたしは出窓から身を乗り出して、航平が指差したノートの箇所を確認した。

航平が後で写す事が分かっているから、自分で言うのもなんだけど、あたしのノートは凄く見やすい。

試験前には、クラスのほとんどの生徒があたしのノートのコピーを持っているくらいだ。


「あぁ、そこは活用形を書こうと思ってたんだけど、時間が無くてまだ途中なの」

「了解」


航平は頷くと、空いた箇所を埋めて、自分のノートを完璧に書き上げる。

それを横目に見ながら、あたしは小さく首をかしげた。