「ひなこの手作りって、食べた事ないじゃん?」

「そうだっけ?」


あたしはそう言って、もう一度首をかしげた。


「そうだよ」と言って航平は頷くと、少し照れたように笑う。


「うん、いいな〜こういうの。調理実習の差し入れって、ちょっと憧れだったんだよね?だから感動」

「でも、実習の残りだよ?」

「それでもいいの」

「ふぅん?」


確かに、あたしには普段、料理をする習慣がない。

母は料理上手だし、料理をするような時間はあたしには無い。


「そんなに気に入ったなら、また今度、実習の時にあげようか?」

「まじでっ!?」


航平の瞳が輝く。


「やった!ひなこ それ約束だからね」


そう言って嬉しそうにクッキーを食べている航平は、やっぱり品の良い犬に見える。

あたしは、航平にばれないようにカップで顔を隠しながら小さく笑った。