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「で?結局、雅人は落ち着いたの?」


20時。

あたしと航平の部屋の出窓が開く時間。


「それはもちろん。何だかんだ言ったって、雅人はお母さんの事好きだもん。夕食の時にはすっかり。はい、熱いから気を付けて?」

「Thanks」


綺麗な発音で答えて、航平はあたしから紅茶の入ったカップを受け取った。



平日20時は、あたしと航平の課外授業が始まる時間。

お互いの部屋の出窓を開いて、今日の授業の復習をす・・・と言っても、基本的にあたしのノートを航平が写すだけだ。


「そうそう、クッキーもあるよ」


あたしがそう言うと、紅茶を飲んでいた航平は目を輝かせた。


「やった!おばさんの手作り?」

「残念でした。今日の調理実習の残り」


帰り道に食べれば良かったと思いながら、可愛くラッピングされたクッキーを渡す。

その包みをまじまじと見つめながら、航平は嬉しそうに笑った。


「なに?」

「これって、ひなこの手作りだよね?」

「正確には、あたしのグループの手作り。味見は済んでるから安心して?」

「そうじゃなくて」


航平が何を言いたいのか分からない。

あたしは首をかしげた。


「なに?」