「服着ないと風邪ひくでしょ!?」


服を抱えてリビングに飛び込んで来たのは、カットソーを腕まで捲り上げて、肩まで伸びた髪を無造作に束ねた母。

勢いがよすぎて、あたしにぶつかりそうになる。


「ただいま」


あたしがそう言うと、母は言葉そのままに、胸を撫で下ろして一息吐いた。


「びっくりした。ひなこ帰ってたのね。お帰りなさい」

「ただいま」


もう一度そう言いながら、あたしは雅人を母に預けた。


「ね〜ね!!」


母の腕の中で暴れて、あたしに手を伸ばす雅人の頭を撫でると、あたしは雅人に笑いかける。


「着替えてくるから、まーくん、またあとでね?」

「や〜!!」

「どうかしたの?」


雅人の頭を撫でながら母に尋ねる。

雅人が言う事を聞かないのは珍しかった。


「お風呂で顔にシャワーの水かけちゃって大騒ぎなのよ。これはママ嫌われたわ〜」


暴れる雅人を抱き抱えながら、母はため息混じりに言う。


「雅人、とりあえず服着ようね?」

「や〜!」


暴れる雅人と宥める母を横目に、あたしは、テーブルの上にあったお菓子を口に入れると、着替えをする為にリビングを後にした。