サクラの木は、風に吹かれてゆっくりと揺れる。
「どうだ?綺麗だろ?」とご主人さまはぼくを見て微笑んだ。
「はい...」そう言ってぼくは、サクラのてっぺんを見る。
「ここな、昔来たんだよ。僕の母親がこの国出身でな」とご主人さま嬉しそうに笑って、懐かしそうに目を細めた。
「ご主人さまのお母さんってどんな人だったんですか?」と訊くと、
「優しい人だった」とだけ言った。
その顔は、とても哀しそうな顔をしていた。