八月町は、暑い場所だった。歩く度に汗が吹き出る。
「暑い…」ぼくはそんな言葉を漏らした。
「も、もう少し行ったら涼しくなるから…」ご主人さまはそう言うが、既に五回くらいはこの会話をしている。
「あ〜暑い!」ついにご主人さまもそう叫ぶ。
「ご主人さまだって暑いんじゃないですか!」
「仕方ないだろ…三年前はこんなに暑くなかったんだからさ!」
そんな言い合いが始まる。
足がふらつき、何度も転びそうになりながら、ぼくはご主人さまの後ろを歩く。
「見えたぞ」ご主人さまは白壁の家を指差す。
ぼくは最後の坂をダッシュした。早くこの暑さが無くなるならと…