一日、そこで過ごすと旅館を出た。
「ご主人さま、今日はどこに行くんですか?」なんて訊くと、ご主人さまは口に人差し指を持ってきて笑った。
「ご主人さま?」
ご主人さまはただ笑うだけで、ぼくを抱き上げたまま、雨の中を歩いていた。
ぼくは、ご主人さまの服を掴んで離れないようにしていた。
ご主人さまは、だんだんとスピードを上げていく…それが怖くてぼくは目をつぶった。