「ルシア。ルシア」ご主人さまの声で、ぼくは驚く。
「なんですか?」ぼくが訊くと、
「魚、食ってるぞ」とぼくの釣り竿を見た。竿の先がピクピクと動いている。
ぼくが近付いて竿を持つと重かった...
「大物か?」と笑いながら、ご主人さまはぼくの後ろに立って、一緒に竿を握る。なかなか、上に上がることのない釣り竿にぼくは、引っ張られる。
「しっかり持ってろルシア」そう言ってご主人さまは、力一杯持ち上げた。
「うわぁ!」ご主人さまの力でも、釣り上げられないのか、ぼくらは川に落っこちた。
体はビショビショ。
「鼻に水が入ったぁ」とご主人さまは鼻を抑えた。
ぼくがずっと見ていると、目が合う。2人で笑い合った。