ぼくが初めてご主人さまと会ったのは、寒い寒い雪の降る夜。
「今すぐ出ていきな!この役立たず!」そう言われ、ぼくは薄着のまま家から追い出された。
 ギシギシと積もった雪の上を歩きながら、今日は星がきれいだな。と思っていた。
「君...こんな所で何してるの?」そう後ろから声をかけてくれたのがご主人さまだった。
「家、追い出された...」ぼくが言うと、そうか、じゃあこれを着なさい。」と黒色のフード付きポンチョをくれた。それはご主人さまとお揃いで、すごく暖かいものだった。
 「こっちにおいで」と言って、ぼくはご主人さまに連れられて近くの洞窟に行った。
 焚き火が洞窟を照らす。
「暖まりなさい」そう言ってぼくを焚き火の前に座らせた。
「君、名前は?」と訊かれて、
「ルシアです」ぼくは言った。
「ルシアね?僕は、テルライト・ラ・パング・ファラディチェングだ」ご主人さまはそう言った。ぼくが困った顔をしていると、ご主人さまは、
「長すぎるよね。好きに呼んでくれて構わないよ」と言った。
「ご主人さま」ぼくが言うと、目を細めて少し微笑む。
「ご主人さまって言われる奴でもないんだがな」と言っていた。
 「ルシア。君は僕と一緒に旅に行く気はないかい?」そういきなり言ってきた。
「旅ですか?」ぼくが訊くとご主人さまは頷いた。
「なにせ、一人じゃ心細い。一緒に来てくれないか?ここで会ったのも何かの縁だ。どうだい?」と言われ、ぼくは頷いた。
ご主人さまは嬉しそうに笑って、
「そうと決まれば、明日の朝出発だ。さぁ、もう寝ろ」と言われ、ぼくは眠った。
 これが、ぼくとご主人さまの出会い。