バッカじゃない?


きっと彼女はヤマジ君のバンドのグルーピーってヤツだ。

確かにバンドの活動はファンあってのものなのかもしれないけどさ……。

それにしてもそれを逆手にとって、ヤマジ君に迫るなんて許せない。


「別に頼んでないし」


ヤマジ君は呆れたような顔してため息ついてる。


だけどそれでも彼女には伝わっていないようだ。

どこにでも空気を読めない人っていうのはいるもんだな、とあたしは妙に納得してしまう。


「えー。じゃ、もいっかいキスだけ。キスぐらい、いいやん?」


姫子はねだるように甘えた声を出す。


「……ねぇえ?」



ヤマジ君はふっと小さく息を吐くとポツリと呟いた。





「わかった。……いいよ」