「守口さんの言うことは上手に聞き流して下さいね」

いつの間にか部屋に入っていたメイドの雪さん。

「あぁ、はい」

わかっている。守口さんは鷹文の側近で、以前はお父様の秘書もしていたから家の中での力は絶大。
一華なんかが敵うはずのない相手。
でも、

「坊ちゃんに言いつけたらいいじゃないですか」
「うぅん」

それが出来る性格なら苦労はしない。

元々、結婚してしばらくは二人で暮らす予定だった。
一華は産後も仕事に戻るつもりだったし、働きながら優華を育てるつもりでいた。
でも、

「午後から奥様がデパートの外商を呼んでいらっしゃるようです。優華様のお洋服やおもちゃを見たいとおっしゃって」

「はあ」
また一つ溜息が出てしまった。

このお屋敷での同居を望んだのは鷹文のお母様。
生まれてきた優華を見てどうしても一緒に暮らしたいと訴えた。
もちろん鷹文は断ってくれたが、事情があって8年も鷹文と離れていたお母様の望みを聞いてあげたいと思った。
でも、さすがにここまで大変とは・・・