「よかったら、気分転換に外出でもしてみてはいかがですか?優華様は私どもで見ておりますし、もうすぐお兄様のご結婚もあるんですよね」
「ええ」

そう言えば、お兄ちゃんと麗子さんの結婚祝いを買いたいと思っていた。

「優華様はお腹が少し緩いだけでとっても元気ですし、何かあればすぐに連絡しますから」
「ええ、でも・・・」

さすがに1歳の娘を人に任して出かけるのは気が引ける。

「坊ちゃんのお帰りは週末でしたよね?」
「ええ、今週はずっと大阪です」

8年間浅井コンツェルンから離れていた鷹文が会社に戻ってもうすぐ2年。
最近では社内での責任も増してきて、仕事も忙しくなる一方。
その分、一華や優華と過ごす時間は減ってきた。
仕事なんだからしかたがない、それは一華だって分かっているけれど、やはり寂しい。

「そうだ、ちょうど産科の癌検診の時期ではありませんか?」
雪さんは思い出したようにタブレットを取り出し、スケジュールを確認する。

そう言えば産後の診察で、『癌検診は年に1度受けた方がいいから1年後くらいにまたいらして下さい』と言われていた。

「早速大学病院の予約を取りますから、いらして下さい」

一華の返事を待つことなく、動き出した雪さん。
外の空気を吸いたいと思っていた一華も反対することはしなかった。