「退院できて、よかった」


病院からの帰り道、ぴょんぴょん跳ねる私に、彼は楽しそうに笑った。


「ああ。それより、ちゃんと挨拶に行くべきだな。あんなに娘を泣かせるなんて……最初から印象悪すぎるし」

「あ、それは大丈夫だと思いますよ。その……ずっと探してた初恋の人だって言ったら、寧ろ母はノリノリです」


バレッタのことも伝えると、もうどこも取り繕う必要のないほど納得してくれた。
でも、それも不思議ではない。
だって、事実だから。


「なら、いいけど。今日、学校休みだろ? 何で制服着てるんだ。って言うか、スカート短い」

「そうですか? 普通だと思いますけど……向こうのことを思い出したら、急に新鮮になっちゃって。それにその……見せたくて。似合わないですか……? 」


学校休み云々ではなく、たぶん彼に見せたかったのも気づいているのだ。
そうでなくて、最後に言われたことが要点。
規定どおりとは言わないが、そんなに短くはないと思うのだが。


「似合う、似合わないじゃない」

「もう、兄様はうるさいなあ」


そんなやり取りとも、何だかくすぐったい。
思わず、そう返してしまうと、後ろからぐいっと手首を引かれた。


「今更、そう呼んでも遅い。俺は、戻ってやらないからな」


彼の中でも、現代の記憶とあちらの記憶が混在しているのは本当らしい。
覚えのあるものよりも少し砕けた口調や、馴染みのない一人称にドキッとした。


「……う。じゃ、じゃあ……恭一郎様」

「どっちもダメだ。どういうプレイかと思われる」


それもそうか。
でも、そのどちらかしか私には経験がなくて、もごもごしてしまう。