私は今、どこにいるのだろう。
あれから、どれほどの時が流れたのか。
すべての感覚を失ってしまったのではないかと危ぶまれるほど、この光は永遠に続くのかと思われた。


《……六つ花の君。もうご自分を責めるのはよしなさい。このままでは、貴女が壊れてしまう》


暗く、鬱蒼とした裏庭で、雪狐が諭すように言った。
大樹の下で、今にも倒れそうに立っているのは一人の女性。


《あの方自身が、ここで貴女と生きると決めたのです。どの世界にいても、寿命というものからは逃れられない。それに、お二人が出逢わなければ、私は小さな姫に会うこともできなかった。貴女には感謝しています》


六つ花の君――そう呼ばれて、顔を上げたのは。


(母様……? )


今よりも若く、髪も長いけれど、それは確かに私の母だ。


『そうね。私も出逢いには感謝しています。異なる世界で暮らしていた私たちが、何の悪戯か巡り逢えて……同じように、小雪と恭一郎殿も。でもね、どうか今は悲しませて。……幸せだったのよ』


話の内容と母様の髪から考えて、これはきっと、父様が亡くなった直後のこと。
この後、母様は髪を尼削ぎにしてしまわれるのだ。


『でも、あなたもよ。繰り返し起きたと、自分を責めないで。私は、これ以上ない時を過ごした。それに、あの子たちも。二人がこの先、何を選ぶかは分からないけれど……出逢ったことを後悔することなど、きっとないわ』


そうだよ。
雪狐は何も悪くない。
だから、苦しまないで。


《……ええ。しかし、恭一郎は危うい。姫の身を案じるあまり、元の自分を殺してしまいそうではありませんか。しばらく、見張っていようと思います》

『まあ。確かに、恭一郎殿の溺愛ぶりは見ていて飽きませんけれど。それは、あなたも同じではなくて? 』


涙に濡れた目がようやく笑って、雪狐の声も少し弾んだ。


《はい。私も、恋をしたのかもしれませぬ。自分こそ目を真っ赤にして泣いていたのに、化け物の心配などなさる、あの可愛らしい赤目のうさぎに》