「ん、にゃあああっ……!? 」


覚悟を決めて足を下ろした途端、後ろ手に引かれて連れ戻されてしまった。


「……本当にお前は……。何でそう、私の想定どおりのことを、わざわざやってみせるのだ」

「お、起きてたんですか? いつから!? ……というか」


そんなことまで想定していたのか。
まったく、彼は私の行動の何手先まで読みたがるのだろう。


「最初からだ。お前の考えそうなことくらい、見当がつく。だが、それにしても遅かったな。瞼が痙攣して、こっちがバレるかと思った」


だったら、その時点で狸寝入りをやめたらいいのに。
私が完全に脱出するまで寝たふりを続けるなんて、本当に趣味が悪い。


「見惚れてたんですよ」

「……馬鹿」


照れたのか、やや荒く私の腰を捕まえ、中へと引きずり込もうとする。


「こんな時間に、私がお前を外に出すと思うか? 」

「思わなかったから、こっそり……うう」


それ以上腹が立つことは言うなと、頬をぐにぐにされる。
こんなことなら、気の済むまで頬っぺたをツンツンしておくんだった。


「せめて夜中くらい、大人しく囚われていてくれないものかな」


知らないくせに。
私がどれだけ抜け出すのに苦労して……結果、失敗しているということを。


「……もしかしたら、いつかは」


手をついて起き上がったのに、上手くいかない。
体重を支えた掌が彼の身体の両隣にあって、意図せず見下ろす格好になったことも。
落ちてきた髪を掻き上げられて、口づけられたことも。
いつの間にか、私の方が下に閉じ込められているのも。
どれを取ったって、これほど囚われているというのに。