その夜。
すやすやという寝息をしばらく聞いた後、私はこっそり起き上がった。
隣に眠る恭一郎様を起こしたらどうしようと心臓がバクバクしたけれど、大丈夫のようだ。
何しろ、恭一郎様ときたら眠りが浅い。
心配性なのか神経質なのか、はたまた余程私が信用ならないのか。
ともあれ、気づかれないように腕から脱け出すのは一苦労だ。


(あたたかい)


この手で撫でられると、どうしたって、うとうと微睡んでしまう。


(クスクス笑われてイラッとするのに、目閉じちゃうんだよね)


『お前は、昔と変わらないな』


それは違う。
子供の頃も、それですぐに眠ってしまったけれど。
心地よいのも種類があるのだと反論したかったのに、いつも抗えずにこてんと眠りに就いてしまっていたわけだけれども。


(……でも! 今日は成功……!! )


今夜は、ばっちり目が覚めている。
どうしても、今夜試してみたかったのだ。
これまで扉が開くのを待ったのは、どれも日中だけ。
当然といえば当然だが、夜中に開かないとは断言できないのだし。


(……起きるな、起きるな、起きるな! )


そう念じる途中、チラリと寝顔に目がいってしまう。


(眉間に皺を寄せて、怒ってもないし。意地悪な目も口も開いてないし。ほっぺを突っつくくらいしてもいいかなあ……って、だめだめ)


そんなことをしたら、さすがに起きるに決まっている。
こうして、じーっと見つめていて、いい子で寝ていてくれるだけでも奇跡だ。
またとない好機を、逃すわけにはいかない。


(今のうちに……!! そーーっと……)


「そんなことだろうと思った」