我が儘なだけ。
あの頃から、何も変わってなんかいなかった。

『さゆも一緒に行く……!! 』

そう言って、この手を離すことができないのだ。


「上手くいったとしても、失うものは多い。それでも……? 」


悲しくないはずはない。
母様や一彰、それに長閑。
ここに残していく、大切なものを思えば苦しくないわけがない。


「私も、もう量ってしまったんです。後悔はしません」


それでも、決めたことだから。
私も選んでしまったから。


「……参ったな。私は、これですべて話してしまった。これ以上、お前に何をやれる? 」


いつかと似た台詞に、ちょっぴり腹が立って胸ぐらを掴む。


(だから、一緒にいてください。それでも、他にもと言うなら)


「元気になって、あちらの世界でも雪が降ったら……また、一緒に雪うさぎを作ってください。あ、うさぎの目は赤くないと嫌ですよ」

「それは……あちらの私がいたところでは、結構難問だな。……善処する」


そうだったのか。
でも、もちろん、そこは本気で言っているのではない。


「それから……」


――また、そうやって。困った顔をして、口づけて。


私の意識が変わったせいだ。
あの、もう一度会えるおまじないと同じくらい、掠めたのか疑問にも思うくらいそっと。
なのに、ほら。
もう瞼がじんと熱い。
今や、何をされても嬉しくて切なくて泣いてしまう私は、雪うさぎよりもずっと脆いのかもしれない。
だって本当は、この身体のどこにも、想いほどの強い自信などない。
だから、寒さに震えながら、こうして植えられていく熱に溶かされていきたいとすら思ってしまう。

――それでも。


(明日、もう一度試してみよう)


二人なら、上手くいくかもしれない。
同じ想いでいたら、叶うかもしれない。
それは、あまりにも都合がよすぎると叱られるかもしれないけれど。

――明日、雪うさぎが泣いたら。

それは、この世界ではないことを祈ろう。
いずれの世界にも春が来て、雪のうさぎは解け、やがては土へと朽ち落ちるのだとしても。
大小のうさぎはぴったりとくっついて、水滴へと変わっていく。
それでもきっと、小さなうさぎは希望を持っていると思うのだ。
新しい世界できっとまた、一緒にいられると信じて。