「仮にあちらに戻れたとしても、必ず助かる保障はない。そんな奇跡に頼るくらいなら、今ここでお前と過ごしていたいのだ。たとえ短くても、確実にお前といられる方を選びたい」


扉の向こうが、もしも戦真っ只中の時代だったら。
もしも、今この時代よりもずっと前のものだったら。
そんな可能性がないとは言えないことは、承知しているけれど。


「……そしたら、その時は二人で一緒に諦めたらいいじゃないですか。私は、どんな世界だろうと絶対に離れませんから。その時また考えましょう? 」


嘘だ。
そんなことがあったら、私は恐らく必死でまた違う道を探すだろう。
でも、ここはそう言わないと引いてくれないだろうから。


「お前は、一体どこからそんな根拠のない自信を引っ張り出してこられるのだ。私など、もう十数年量っては比べてきたというのに」


それもまた、この人らしい。


「成功する自信なんて、はっきりとは持てませんけど。でも、何度も言ってるじゃないですか。私はあなたのことが好きで、だからどうしても諦められない。あなたといられる世界があるのなら、そこで一緒にいられるのなら何だってできる。あるのは、その自信だけです」


強いのでも、自信たっぷりなのでもなく。
彼がいなくなるほどの恐怖はない。
だから、違う道を選んでいるだけ。
たとえそれが、どんなに望みが薄くとも。
ただ、それを握り締めて離さないでいるだけだ。