恭一郎様の、何でも自分のせいにしてしまうところは良くない。
結論から言うと、それはどう考えても私自身のせいなのだけれども、彼は頑なに譲らなかった。



・・・



『さゆ? もう、さゆはまた、そうやって……』


(だって)


だって、雪うさぎを作り終わったら、帰っちゃう。
いつかと同じように、私は雪玉を作っては壊していた。
今日が最後でないと、どうして言えるだろう?


『手、悴んじゃうだろ。せっかく南天だって見つけてきたのに。目が赤くないと雪うさぎじゃないって、さゆが言うから……』


そうだった。
どうせ作り上げる気はないくせに、おしまいになるのがどうしても嫌で、前回私はそう難癖をつけたのだ。


『さゆ……? 』


少し苛々したのか、無理やり私に雪を捨てさせようとした彼が息を呑む。


『……すごい熱だ』


ああ、バレちゃった。
でも、嫌だ。帰りたくないよ。
本当に、拐ってくれたらいいのにな。
そうだ、彼が帰りそうになったら、こっそりついて行っちゃおう。
熱で朦朧としながらも、私はまたそんな勝手な決心をして。


『どうせ、その辺で見てるんだろ!? さゆを……』

《それは、なりませぬ。恭一郎、貴方はもう帰らねば。少なくとも、今日のところは》


ざわりと。
冬でも辛うじて残っていた木々の葉が揺れた先に、その光の扉はあった。
虚ろに開いた目の先に、ちょうど子供が通れるくらいの大きさの扉。


『でも、さゆを送ってあげないと!! 』

《そちらは、私が何とかします。だから、貴方は貴方の世界へ。そうでないと……》


扉の光が徐々に弱まっていく。
きっと、もう閉じかけているのだ。
行かないと――でも、今度はいつ逢える?


『……っ、やだあ……っ!! さゆも一緒に行く……!! 』


ふらふらのくせに、ありったけの声で叫ぶ。
さっきは雪を丸めることすらできなかったのに、ぎゅっと彼の背中にしがみついた。


『さゆ……』


雪うさぎが泣いちゃうよ。
きっと、明日になったら朝日が射して。
せっかくつけてくれた真っ赤な目に、涙がいっぱい溜まって解けてしまう。


『……っ…!! 』

《待ちなさい……!! 恭一郎、何を……!? 》