しん、と静かな教室には、壱と私の2人きり。
壱はガタッとまた自分の席に戻ってきて、だけどいつもみたいに身体ごと後ろ、つまり私の方を向いて。
今、顔見られたくない。
私がふい、と顔を逸らそうとしたら壱は、その動きは読めてる、とでも言いたげな目で私を見て、両手で私の顔をホールドした。
首が動かなくて、嫌でも真正面の壱と目を合わせなくちゃいけなくなる。
ほ、んといつのまにこんなに力強くなったの…。
黒目がちな丸い瞳に見据えられて、言葉がでない。
「仁乃、なんて顔してんの」
壱に言われてはじめて、目に透明な膜が張っているのが分かった。
やばい、次の瞬きで、私たぶん泣く。
なんで?なんで泣く?意味分かんない。
壱が怒ってるから?
私のお弁当食べなかったから?
私のお弁当じゃなくてサラサラ女子のお弁当食べたから?
私がそうしろって言ったんじゃん。
私がそうしろって言ったから壱は食べたんじゃん。