結局今日も壱とお昼か、と小さくため息をついて壱のあとを追い隣に並ぼうとした時。



「あの、あ…相原くん…っ!」



廊下の前方から、サラサラロングヘア―が麗しい感じの女の子が壱の前に立った。


透きとおるような声にピュアな前髪。系統的に言ったら、今回は新田ちゃんタイプ。うるうるの瞳で壱を見上げている。


でました、壱好きの女(結構ガチVer.)。


こういう場合はそっと教室に引っこむのが吉…。


悟った私は後ずさりして教室に戻ろうとするけど、背後の野次馬ズ+光太郎くんの友達がなぜかお祭り騒ぎ状態で、ドアのすぐ向こうで入り口を塞いでいる。

ちらり、視界に映った光太郎くんがげらげら笑いながらバスケのボールを額に乗せてよろよろしていて、ち、と舌打ち。



「…なに?」



こっちはこっちで、なかなか切りださないサラサラ女子におむずがり気味の壱が催促。


空腹時の壱のご機嫌は平常から3割引きなのだ。



私は仕方なく、お祭り騒ぎにギリギリまで背を近づけて、空気になるべく黙った。