「俺も仁乃ちゃんのおべんとー食ってみてー」


光太郎くんのその台詞を聞いた壱が、無表情のまま自分に巻きついている光太郎くんを、じ、と冷たい目で見つめると、教室は一瞬しん、と静まりかえって。



「光太郎、殺すよ」



壱の一番低い声が教室に重く響いた。

綺麗な左目のすぐ下あたりが、ひく、と動くのは壱の怒りマックス時。



「こえーよ壱!冗談だろが!」

「タチの悪い冗談言うな」


壱が雑な仕草で光太郎くんを自分から剥がす。


「ええっ理沙子、新田、俺そんなタチの悪い冗談言った?!

「気にすんな光太郎、一般的にはそんなに悪い冗談じゃない」

「うん、相原くん頭がちょっとアレなんだから」


「そうそう、仁乃命だから」


理沙子、新田ちゃんに続いて壱が言うから。


「「「自分で言うな」」」


野次馬3人にツッコまれる。



でも壱はそれを無視して「行くよ仁乃」とだけ言って廊下に出た。