「仁乃、俺これ好き」


壱が箸でつまんで見せたのは、木苺入りの卵焼き。


壱の味覚はやっぱり独特。


自分で作っておきながら狂気的なおかずだと思うけど、壱が好きなんだから仕方ない。

ほとんど私と同じ内容のお弁当だけど、ひとつくらいは壱の好きなものを入れてあげたくてひと手間かけている。

オーケー分かってる。十分、分かってる。



私は 壱に 甘すぎる !



それはもう絶望的に。

こういう私の絶望的な甘さが壱を過ちに導いているのかもしれないのだ、いい加減改めなければ…。


そう思うのに。


ほんの少し、ほんの少しだけど口元をゆるめて、嬉しそうに狂気的卵焼きを食べている壱のかわいさといったら形容しがたくて私は…



懲りずに狂気的おかずを作ってしまうのだ、悲劇的。




あの実験初日から1週間。


クラスではもう私と壱が一緒にお昼を食べるのは当たり前みたいになっている。