「ちょっと待ってよ壱…」
何度かそう声をかけたけど、壱は振り返らない。
仕方なくついていくと、壱は体育館へ続く渡り廊下から中庭に出た。
サッカーボールで遊んでいる男子や、シートを敷いてピクニック風にお昼を食べている女子たちがいる賑やかな中庭を歩き、一番すみっこにあるベンチにふわっと座って。
ぽんぽん、と横を叩いて、私を見る。
ほんと、猫みたいだな。
私はため息をついて、壱の横にそっと座った。
壱はなにも言わずに私のミニトートを私の膝に乗せて、自分は自分で、持っていたナイロン袋からパンを取りだして食べはじめる。
イチゴ&醤油パン、という謎のパンをぱくぱくと。
…おいしいの?それ…。
聞きたくなるけど、壱の味覚がおかしいのは昔からなので置いとくとして。
私を友達のもとから拉致っといて、なにをあいも変わらず平然と…。