「なにかな…」
「さっきから先生が呼んでる」
「なにかな…」
「プリント。仁乃で止まってる。回して」
机には確かに壱から回ってきたプリントが数枚溜まっている。
ああはいはい、プリントね、後ろに回せばいいんでしょ…。
「…なにぼーっとしてんの」
「してないよ別に」
「実験のこと考えてた?」
「考えてないよ全然」
「今日の朝、なかったことにしようとしてた?」
鋭く言われて、ぎくっとする。
「そんなそんなそんな…あはは」
片手を激しくぶらぶら振って否定すると。
「仁乃って嘘つく時、リアクション大きくなるよね」
「ぜんっぜん!?」
そんなことありませんけど!
心のなかでそう続けた時。
「おーい、出席番号1と2」
ネイビーのスーツをびしっと着こんだ担任の夏川先生が、大きな声で言った。
推定25~27歳の爽やか系イケオジ予備軍。