「でも新学期はやっぱわくわくするじゃん?席替えするのかな?」

「さあ…初日だし番号順でしょ」

「あ、じゃあ前後の席だね」



あいはら壱とあだち仁乃。


昔から、同じクラスならほとんどいつも出席番号は連番になる。

出席番号の頭からふたつ、つまり1番と2番を、壱と私で独占する感じだ。



「ちょうどいーね」



壱が前を向いたまま、ぽつり呟いた。



「え、なにが?」



思わずなにも考えずに、笑顔で聞くと。


とろんと眠たげな黒い瞳で私を見つめてから、すぐにまた前を向いて壱は言った。



「実験するのにちょうどいーねって。席遠いと面倒だし…」



ふわわ、とまた欠伸。


うーんなるほどよかった。

私、変態じゃなかった、頭おかしくなかった。


笑顔のまま自分にそう言い聞かせてから、ふ、と立ち止まる。



ああ、昨日のあれ、夢じゃなかったんだあ……。



冷たい横風が私にだけ吹いている気がした。




どうなる私の新学期…。