「乱暴にしたら傷になっちゃうよ」

そう言った後、雪の目に優しくハンカチが当てられる。可愛らしいクローバーの模様が描かれた前のハンカチだ。

「何があったの?」

前に優しく訊ねられ、あまり話したことがないただのクラスメートという関係だというのに、雪は心を開いてしまっていた。少しずつローが死んでしまったことを話す。

「ごめんなさい。どれだけ泣いても涙が止まらないの……」

雪はそう言い、前のハンカチで涙を拭う。前は「泣いてもいいよ。いっぱい泣いて」と雪を強く抱き締めた。温もりが雪を包んでいく。また目の前がぼやけていった。

「たくさん泣けるよう、僕も手伝うよ」

前にそう微笑まれた後、雪は椅子に誘導されて座らされていた。そして目の前で前がフルートを用意し、音楽を奏で始める。優しく切ない音が教室に響いた。

「Lemon……」

雪が大好きでよく聴いている歌の一つだ。前の奏でる優しいフルートの音に、頭に浮かべたLemonの歌詞に、雪は両手で顔を覆う。