友達には心配されるのが嫌で、学校では無理やり笑顔を貼り付けていた。ローのことを考えそうになったら別のことを考え、それでも泣きそうになったら自身の手をつねる。そうして放課後まで過ごしたのだ。

雪はダンス部に入部している。小さい頃から踊ることが大好きで、この高校にはダンス部に入るために入った。そのため、部活を休むことなく行っていたのだが、今日はローを失った悲しみから踊れそうにない。そのため、初めて部活を休んだ。

「……せめて、最期は「ありがとう」って言いたかったのに!」

誰にもぶつけることのできない怒りや悲しみでどうにかなってしまいそうだ。その時、教室のドアがゆっくりと開く。雪は涙を流した状態のままドアの方を見てしまった。

「えっ!?だ、大丈夫?」

そこにいたのは前だった。吹奏楽部に入部していて、可愛らしい顔立ちだからか女子に密かに人気がある。

そんな前はフルートを手にし、泣いている雪を見てとても驚いていた。雪は慌てて涙を拭う。

「ご、ごめんなさい!すぐにどこかへ行くから!」

吹奏楽部は個人で練習する日がある。今日はその日なのだ。ここで泣いていては練習の邪魔になってしまう。雪は乱暴に涙を拭おうとした。しかし、その手を優しく掴まれる。