動けない私に気づいた詩恩が、人混みをかき分けてそばに来てくれた。

彼の手には花束が握られている。

うわぁ、花も顔もめっちゃ綺麗。



「もしかして、明莉も写真撮りたいの?」

「うん……」



ポツリと返事をすると、詩恩は私の腕をグイッと引っ張って立ち上がらせ、素早くカメラを自撮りモードにして写真を撮ってくれた。



「ありがとう!」

「ううん。それより膝大丈……」

「すみません! 次お願いします!」



何か話していた様子だが、お客さん達の声で遮られてしまった。

すごい人気ぶり。こりゃあ明日からしばらく噂されそうだ。



「北松さん!」

「あ、雄基さん!」



人混みを抜けて、撮ってもらった写真を見ていると、雄基さんとバッタリ。



「お久しぶりです!」

「久しぶり。うわっ、膝大丈夫?」

「えっ?」



視線を落とすと、膝からダラダラ血が流れている。

なんかヒリヒリするなと思ったら。さっき転んだ時に擦りむいたっぽい。


静かな場所に移動し、雄基さんに手当てしてもらうことに。



「あの、今日はご両親も一緒なんですか?」

「うん! さっきみんなで写真撮ったんだ。何年ぶりだろう」



「これだよ」と、撮りたてホヤホヤの写真を見せくれた。

久しぶりの家族写真が女装コンテストって……。
やっぱりこの家族変わってるな。