「早くしろ」



私は慌てて会長に近寄るけど……。

会長はドライヤーを手に持ったままで。


これって。



「何度も言わせるな。乾かしてやるから、ソファに座れ」



そういうことだよね。

でも、そんな髪の毛を乾かしてもらうなんて恥ずかしくて出来ない!



「じ、自分で出来ます!」

「うるさい」



会長の鋭い眼力に私は何も言えなくなってしまった。


大人しくソファに座る。

会長がドライヤーのスイッチを入れたことが分かる。

会長の手が、私の髪に触れた。

やさしい手つきで、私の髪の毛を撫でるように乾かしてくれる。


気持ちいいかも。

私はゆっくり目を閉じた。

会長の手のぬくもりと、ドライヤーの温かさを感じる。


いつもは鬼会長なのになぁ。

今日はいろんな会長の姿を見ることが出来た。

明日からどんな日々を過ごすのだろうか。


なんだか幸せな気分だった。