会長はソファから立ち上がって、私に近づいてくる。


……近づいてくる?

気がつけば、会長は目の前に立っていて、私が会長を見上げる体勢になっている。



「え、っと」



会長の手が、すっと伸びてくる。

そのまま、私の髪に触れた。

ドキッとする心臓。

突然の出来事に、頭が追いつかない。



「髪……。濡れているな」

「え、あ……」



会長は髪から手を離し、私の横を通り抜けていく。


な、なんだったの……。

心拍数が上がる。


心臓を落ち着かせるために、私が深呼吸をしていると。



「なにしてんだ」



後ろから会長の声が聞こえた。

ビクッと肩が跳ねた。

振り向けば、会長が手にドライヤーを持って立っていた。



「髪、乾かしてやるから来い」



会長はソファの後ろにあるコンセントにドライヤーのコードを繋ぐ。