「北澤さん。進行しなくていいのかしら?」



と、彩菜先輩に突っ込まれてしまった。


ぼーっとしすぎた!


会場に笑いの渦が沸き起こる。

恥ずかしいけど、会場を盛り上げ続けてくれた彩菜先輩には感謝だ。



「つ、続いて! ミスターコングランプリ!」



会場が暗くなり、スポットライトがまわりだす。


マイクを握りながら会長を見つめる。

時折、スポットライトの光が会長をかすめる。


会長が、グランプリをとったら……。

喜ぶべきなの?


会長の人気はさらに高まるだろう。

そしたら、一緒に登下校することもなくなるかもしれない。


複雑に感情が乱れる。


ドキドキする心臓の音がマイクに拾われないように、と願う。


スポットライトが止まる。


その光をまぶしそうに見ていたのは。

……会長だった。



「み、ミスターコングランプリに選ばれたのは……。我らの生徒会長、高橋 春馬先輩です!」



声が震えないように、会長の名前を口にする。


会長に一言、お願いしなきゃ……。

私は震える足を抑えて、会長のそばまで行った。


会長にマイクを差し出す。

私からマイクを受け取った会長。



「ありがとう」



彩菜先輩に続いて短い言葉で終わらせているけれど、歓声に包まれている。